作成日 2017/3/27
最終更新日 2017/3/28

JIS X 0129-1による品質の定義

 JIS X 0129-1にて品質が定義されています(※1)。
 ただ、定義されているといっても、ざっくりとした定義なのですが、まずは品質とは何かを説明しないことには 話が進まないので、説明します。
 ちなみに、JIS X 0129-1は情報処理技術者試験の試験範囲ですし、仕事で使った経験もあります。

※1:品質については他にもJIS規格があります。
 例えば、JIS X 25010(システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)−システム及びソフトウェア品質モデル)です。これはJIS X 0129-1の後継規格なのですが、まずは簡単な方から説明した方が良いと言うことで、JIS X 0129-1を説明します(※どうもJIS X 25010も試験範囲の様です)。
 他には、JIS X 25012(ソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)−データ品質モデル)とか。
 特定の用途に特化したものであれば、例えば、JIS X 8341-3 (高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第3部:ウェブコンテンツ)があります。

 品質に関するJISは結構あるみたいなので、紹介するには別途ページを分ける必要がありそうです。


1.JIS X 0129-1について
2.JIS X 0129-1を見て言いたいこと
3.JIS X 25010
4.参考文献など


1.JIS X 0129-1について

 ここでも説明しますが、詳しいことはJIS規格を自分で見てほしいです。
 Wikiにも載ってますね。

 JIS X 0129-1の規格名称は「ソフトウェア製品の品質−第1部:品質モデル」です。
 JIS X 0129-1では、外部品質及び内部品質のための品質モデルを以下のように定義しています。

表1 JIS X 0129-で定義している「外部品質及び内部品質のための品質モデル」
特性副特性ざっくり説明
機能性合目的性、正確性、相互運用性、セキュリティ、機能性標準適合性正しい動作をするか?セキュリティがここに入っている理由が良く分かりませんね。後継規格であるJIS X 25010ではセキュリティは別になってます。
信頼性成熟性、障害許容性、回復性、信頼性標準適合性故障のしにくさ、と言いたいが、ソフトウェアは故障しない。障害(バグ)の発生頻度といった方が良いでしょう。
使用性理解性、習得性、運用性、魅力性、使用性標準適合性使いやすさ(そのまま)
効率性時間効率性、資源効率性、効率性標準適合性効率の良さ(これもそのまま)
保守性解析性、変更性、安定性、試験性、保守性標準適合性修正のしやすさ
移植性環境適応性、設置性、共存性、置換性、移植性標準適合性他の環境への移植のしやすさ

 さらに、利用時の品質のための品質モデルを以下のように定義しています。

表2 JIS X 0129-で定義している「利用時の品質のための品質モデル」
特性ざっくり説明
有効性ソフトウェアを使用して目的を達成できるか?
生産性ソフトウェアを使用しての効率の良さ
安全性例えば、セキュリティの問題が無いか?
満足性ソフトウェアを使用して満足するか?

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2.JIS X 0129-1を見て言いたいこと

  1. 考慮しないといけないことが、いろいろあるということ。

     品質というのは、機能性(正しく動作する)だけではないんです。

     断っておきますが、品質はJIS X 0129-1に定義されたもの全てが、常に必要というわけではないです。
     ここの品質特性あるいは品質副特性がどの程度必要か?は作るシステムによります。品質というのはトレードオフなところがあって、全部きっちりというのは無理なんです。

  2. JIS X 0129-1は開発時における考慮漏れ(特に非機能要件)を防ぐために使えます。

     機能性以外は、非機能となります。
     これはお客さん(使用者)から当たり前に求められるもので、こちらから聞かない限り教えてくれない(意識しにくいため)です。
     なのに開発コストを結構、押し上げるという。。。

     趣味でプログラミングを行っている人は、お客さんは居ないけど、保守性が悪いと、あとで、修正するときに大変な思いをしますよね。なので大事です。
     JIS X 0129-1を知ることによって、こういうことも考えないといけないんだという、きっかけになります。

  3. JIS X 0129-1はどうやって品質を計測するのかとか、具体的にどのようにすれば品質が上がるのかまでは、教えてくれません。

     品質を上げたいなら、別途、業務知識、関連法規、その他のJIS、ソフトウェア工学やセキュリティなどの勉強が必要ということ。
     JIS X 0129-1は本当に品質の定義だけです。もちろん、これでも十分使えるものなのですが(作った人、偉いですよ)。
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3.JIS X 25010

 どうも、JIS X 0129-1はしっくり来ないところがありますね。特に機能性-セキュリティが。
 ということで、JIS X 0129-1の後継規格であるJIS X 25010も紹介します。言いたいことは、JIS X 0129-1と同じなので、そこの説明は省きます。
 だた、JIS X 0129-1の後にJIS X 25010が出てきたと言うことは、JIS X 0129-1には品質の定義について良くない所があったのだろう。
 これは、「品質」を考えることが難しいと言うことを意味してます。

 前置きが長くなってしまいました。
 JIS X 25010では、製品品質モデルを以下のように定義しています。

表3 JIS X 25010で定義している「製品品質モデル」
特性副特性ざっくり説明
機能適合性機能完全性、機能正確性、機能適切性使用する人のニーズに合っているか?
性能効率性時間効率性、資源効率性、容量満足性資源(時間、紙、電気代など)の効率性
互換性共存性、相互運用性例えば、他の製品との間でデータがやり取りできるか?
使用性適切度認識性、習得性、運用操作性、ユーザエラー防止性、ユーザインタフェース快美性、アクセシビリティ使いやすさ
信頼性成熟性、可用性、障害許容性(耐故障性)、回復性ちゃんと動くよね?ということ
セキュリティ機密性、インテグリティ、否認防止性、責任追跡性、真正性セキュリティ(そのままですみません)
保守性モジュール性、再利用性、解析性、修正性、試験性バグとか仕様変更によって修正する際のやりやすさ
移植性適応性、設置性、置換性他の環境で動かしやすいか?

 JIS X 0129-1と同じく、利用時の品質についても定義しています。
 
表4 JIS X 25010で定義している「利用時の品質モデル」
特性副特性ざっくり説明
有効性有効性ソフトウェアを使用して正確に、あるいは完全に目的を達成できるか?
効率性効率性ソフトウェアを使用しての作業効率がどうか?人件費だけではなくその他の費用も含めて考える。
満足性実用性、信用性、快感性、快適性ソフトウェアの利用者が満足するか?
リスク回避性経済リスク緩和性、健康・安全リスク緩和性、環境リスク緩和性潜在的なリスクを緩和できるか?
利用状況網羅性利用状況完全性、柔軟性ソフトウェアを普通に、あるいは想定外の使用をしたときの有効性、効率性、満足性、リスク回避性はどうか?

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4.参考文献など

 このページを作成するのに参考にしたページです。

番号

リンク先の名称

リンク先の説明

リンクした日

1 日本工業標準調査会:データベース検索 JIS規格を検索し、見ることが出来ます。 2017/3/27
2 ISO/IEC 9126 - Wikipedia ISO/IEC 9126の説明 2017/3/27

番号

著者名

書籍名

ISBN

説明

1 技術評論社 ソフトウェア開発技術者合格教本〈平成16年度〉 (情報処理技術者試験) 4774118826 313ページにJIS X 0129-1の説明があります。古い書籍ですみません。
2 翔泳社 情報処理教科書 アプリケーションエンジニア 2006年度版 479811099X 57ページにJIS X 0129-1の説明があります。古い書籍ですみません。

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